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現代小説 更新中

(続)湯西川にて (1)一週間の休み

(続)湯西川にて (1)一週間の休み

(続)湯西川にて (1)一週間の休み


(続)湯西川にて (1)一週間の休み
(かずらの橋から見える、本家伴久のようす)


 一週間ほど湯西川温泉を離れるために、芸者の清子が伴久の若女将を訪ねています。
先代女将が隠居を決めたため、今では若女将が老舗旅館の18代目の顔になりました。
中学卒業と同時に、15歳のときから芸者修業をはじめた清子も、今年で
ようやく24歳になりました。
21歳で私生児にあたる響を生んだ芸者の清子ですが、
あれから3年も経つと、今ではすっかり『子持ちの芸者』として湯西川では定着し、
かえって、年配客からの指名が増えるほどになります。


 「なんだぁ、響は(置き屋の)お母さんが一人占めなのか。
 私の処へ置いていけばいいのにと思っていたのに、そりゃあ、まったくもって残念だ。
 で、どうなのさ俊彦さんの具合は?
 オートバイでこけたんだもの、やっぱり、タダごとではすまないわね」


 「すみません、いつも勝手と心配ばかりをおかけして。
 せっかく都内の老舗ホテルを紹介してもらったのに、何が気に入らないのか
 あの人ったら、勝手に房総のちっさな旅館へ就職を決めてしまうんだもの。
 それも、やれやれやっと落ち着いたと思った矢先に、
 今度は交通事故を起こすなんて・・・・
 一週間だけ、看病に行ってきますので、お手数をおかけいたします」


 「いいのかい、本当に?
 響ちゃんを連れていかなくても。
 あんただって本心はあの人に、響ちゃんを見せてあげたいだろうに。
 チャンスなんて、そうそう何度もやって来ないんだよ。
 これを逃したら、もうこの先で、親子の巡り合わせの機会が無いかもしれないし。
 いいのかい、それでも」


 「一人で育てると、もう、とうに決めたことですから。
 などと偉そうなことを言っても、実際には、
 置き屋のお母さんと若女将にお世話になりっぱなしが本音です。
 じゃあ、我がままばかりで申しわけありませんが、これから房総まで行ってまいります。
 一週間の間に、また響が寂しがるかも知れません。
 もしもの時は、また、いつものようによろしくお願いいたします」


 「私の部屋で寝るのが大好きだったものね、あの子は。
 お座敷が終わるまで、ほんとうの自分のお家のようにスヤスヤと眠るんだもの、
 周りのみんなが不思議がっていたわよねぇ。
 気持ち良さそうに抱っこをして帰って行く日々が始まって、もう、まる3年だ。
 いいのかい、本当に。
 響ちゃんに、お父さんの姿を見せてあげなくても・・・・」


 「一週間だけ、私がその罪滅ぼしをしてきます。
 と言っても、絶対安静で、寝た切りの状態だそうですから、たぶん何も出来ませんが。
 顔さえ見れば、私の気も済みますので・・・・」


 「やっぱり、惚れているんだね今でも。あんたは」


 「女将さん・・・・」


 「ゆっくり看病に行っといで、後の事は心配をせずに。
 湯西川で働く芸者は、とても深い甲斐性と人情の持ち主ばかりさ。
 なにがあったって男に尽く抜いていく、そんな気高い律儀さも伝統だ・・・・
 あんたも、そんな一人になってきたけど、響のことは、それとはまた別の問題だ。
 俊彦さんが戻ってくる気が有るなら、いくらでも働き口は紹介はしてやれるけれど、
 たぶん、あの性格だ・・・・それもまた無理な話しか。
 いつまで経ってもどこまで行っても、あんたにも響も、苦労が耐えないね」


 「でも、それも私が望んだ道ですから・・・・」


 「まぁ、いいさ。
 芸者の顔も、響の母親の顔もすっかりと忘れて、
 素のままの一人の女に戻って、愛しい男のもとへ飛んで行っておいで。
 女が枯れちまうのなんか、あっという間だ・・・・
 久し振りに、あんたの顔に、女の艶を見たよ。
 その顔のまんまで、行き会ってくるんだよ、変に小細工なんかしないで。
 あしかけ4年ぶりの再会だ。
 たっぷりと、気が済むまで甘えておいで」


 「女将さん・・・・」


(2)へつづく




(続)湯西川にて (1)一週間の休み
(平家の落人の郷・湯西川温泉)

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