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居酒屋日記・オムニバス(1)     第一話 陽子というおんな ①

居酒屋日記・オムニバス(1)     第一話 陽子というおんな ①

居酒屋日記・オムニバス(1)
    第一話 陽子というおんな ①


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 どことなくうらぶれた雰囲気が漂っている。
縄のれんと赤提灯が風に揺れている。入り口が格子戸なら満点だ。
居酒屋と言えば、10人中9人までそんなイメージを抱く。
最果ての地にポツンと建つ居酒屋などと言えば、最高のロケーションになる。


 どっこい。今の時代。居酒屋なんてやつは、日本全国どこにでもある。
酒と、それに伴う簡単な料理を提供する飲食店。それが居酒屋と言う空間だ。
昭和の居酒屋は主に、男性会社員や肉体労働者たちの社交場として機能していた。
歌謡曲の世界にもひんぱんに登場する
だがなぜか男女の出会いよりも、別れが似合う場として登場する。


 日本人の飲酒の歴史は古い。太古の時代までさかのぼる。
だがこの頃、飲酒が許されていたのは特権階級の貴族か、身分が高い人たちのみ。
庶民の飲酒が定着したのは、大衆文化が花開いた江戸時代に入ってから。
江戸時代の半ば。酒屋が酒を売る以外に店先で客に飲ませ、簡単なつまみを
提供するようになったのが、日本の居酒屋の始まりと言われている。


 居酒屋のチェーン展開が、本格的にはじまったのはバブル期の1980年代。
あ・・・長々と居酒屋のうんちくを語っていたのでは、話が先へすすまない。
適当なところで切り上げましょう。
残りはまた後日、適当な時期に記述いたします。


 田口幸作は、田舎にある居酒屋の店主のひとり。
女房は居ない。42歳になるやさ男だが、家に帰れば13歳の娘がいる。
優しい男といえば「情が深い男」「気遣いの出来る男」といったプラスのイメージが
あるが、同時に「弱々しい男」「なよなよした男」といったマイナスのイメージも
つきまとう。


 女房と別れたのは、いまから8年前。
正確に言えば、女房に出ていかれたのが8年前と言うことになる。
出ていくような前触れは、まったく無かった。
『クリーニング屋さんへ行ってきます~』と、いつものように明るく出かけて行った。
だがその日を境に、いくら待っても女房は戻ってこない。
常連客のひとりと逐電(ちくでん)したと知ったのは、女房が消えてから
2年ほどが経った真夏のことだ。


 夫婦2人で仲良く切り盛りしてきた店に、坂道を落ちていくような日々がやって来た。
恋愛中のカップルが、いちはやく店から去っていく。
顏なじみになった近所の夫婦も、少しずつだが足が遠のいていく。
いつの間にか閑古鳥が住み着いて、じめじめとした声で終夜泣き続けるようになった。


 「なんだい。今夜も客がいないのか。
 しょうがないなぁ、やる気のない店主がいる店は・・・日本酒、熱燗!」


 今夜も陽子がやって来た。
2週間ほど前から、ふらりと顔を見せるようになった女だ。
現れたその日から何が気にったのか、毎晩つづけて通うようになった。
酒はあまり強くない。
熱燗一本をゆっくりと空け、1000円札一枚をカウンターに置いて帰っていく。
金がないわけではなさそうだ。着ているものに上質な品が有る。
全体的にスレンダーな体型をしている。
だが、こんもりと盛り上がったセーターの胸が、妙に男の目を呼び寄せる。


 (俺より年上だな。50そこそこかな年齢は・・・)


 幸作がいつものように、熱燗を付け始めたとき。
カラリとガラス戸が開いて、酔っ払いの男たちがぞろぞろと顏を出した。
「おう、会合の帰りだ。酔いが足らねえから、もう少し飲ませてくれや」
酔っぱらった男たちが、どやどやと店の中になだれ込んできた。


 (2)へつづく




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