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忠治が愛した4人の女 (61)       第四章 お町ふたたび ⑬

忠治が愛した4人の女 (61)       第四章 お町ふたたび ⑬

忠治が愛した4人の女 (61)
      第四章 お町ふたたび ⑬


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 島村の宿へ入ると、街道が急に賑やかになる。
すぐ近くに河岸が有るため、舟人足の姿が増えてくる。
上州で誕生した高瀬船は、長さが14,5尋(27m)、幅は1丈23尺(4m)。
500~600俵のコメを軽々と積んで、江戸まで運んでいく。
江戸までの往復に、早くて10日がかかる。
そのため。船頭や舟子が生活できるよう、船首部分に船室が作られている。


 利根川の上流部(関宿より上)では、吃水の浅い小さな舟が使われる。
上州平田舟を呼ばれる小舟だ。
それでも長さは15mから24mほどある。横幅はおおむね、3mから4m。
荷物ばかりではなく、奥州路から江戸へ入る人々を運ぶための客室もついている。


 平田舟は、大きな帆柱を持っている。
主に風の力で帆走していく。流れの早いのぼりの場合、曳船によって運航していく。
牛馬が引く場合も有る。しかし、おおくの場合、人足たちが綱をもち陸地から
力を合わせて上流へ、平田舟を引っ張った。


 宿場の真ん中まで2人が歩いてきたとき。
辻から若い男が、ふらりと2人の前にあらわれた。
風体があまりよくない。案の定、伊三郎一家の三下だった。


 「お2人さん。時間があるようでしたら、いい賭場へ案内いたしやすぜ」


 「へっ、賭場をひらいてんのか、こんな真昼間から?」


 「お客さん。此処は泣く子も黙る、伊三郎一家のひざ元です。
 ここでは伊三郎親分が、すべてのことを決めているんです。
 安全な賭場であることは、あっしが保証いたしやす」


 「三下に保証されても、信用することは出来ねぇなぁ。
 なぁ忠太郎。おめえもそんな風に思うだろ?」


 文蔵が忠治のことを、忠太郎と呼ぶ。
忠治も阿吽の呼吸で、「おう。まったく信用できねぇなぁ」と三下を突き放す。
三下があわてて、2人の前に立ちはだかる。


 「いやいや。見れば同業のお2人さんのようだ。
 損はさせねぇ。百聞は一見にしかずだ。まずは賭場の中を見てくれ。
 堅気の旦那衆が、10人あまり寄っているんだ。
 勝負次第じゃお2人さんに、たんまりと稼ぎが入るかもしれねぇぜ」


 「ほう。素人の旦那衆が10人も集まってんのか。そいつは豪勢だ。
 素人なら、赤子の手をひねるようなもんだ。
 どうする忠太郎。すこし遊んでいこうじゃねぇか」


 「そうだな・・・」いぶかりながら2人が、三下につづいて歩き出す。
堤防を越えて、平塚の河岸に向かって三下が下っていく。
平塚の河岸は、江戸と上州を結ぶ航路として栄えている。
茅(かや)葺や、瓦で葺いた回船問屋と、たくさんの土蔵が見えてきた。
伊三郎が最初に縄張りをもったのが、目の前にひろがっている平塚の河岸だ。
伊三郎はもともと、金のある船問屋のせがれとして生まれている。


 少し下ったところで、三下が脇道へそれていく。
おおきな船問屋の裏手に回りこむ。そのまま離れのような建物に近づいて行く。
離れの前には、屈強そうな2人の男が立っている。
そのうちのひとりが、腰をかがめる。
「お腰のものを預からせていただきます」と文蔵に向かって頭をさげる。


 賭場に刃物は持ち込めない。
うなずいた文蔵が、ゆっくり長脇差を引き抜く。
受けとろうとして男が手を伸ばした瞬間。文蔵が刀の柄で、男の頭をいきなり叩く。
不意を突かれた男が、もんどりうって倒れていく。
もうひとりが身構えた瞬間。文蔵の右のこぶしが男の腹へのめり込む。


 「なんでぇ、やっぱり賭場荒らしをやるのかよ・・・
 しょうがねぇな、こうなりゃ問答無用だ。
 じゃこっちの三下は、俺がたたきのめしておくか」


 振りかえった忠治が三下の顔を、思い切り、こぶしで叩く。
充分な手ごたえのあと。三下が白目をむいて地面へ崩れ落ちていく。
あっというまに入り口の男たちをかたずけた文蔵と忠治が、「行くぜ」と
声を掛け合ったあと、奥に向かってずんずんと踏み込んでいく。


(62)へつづく


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