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現代小説 更新中

赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (1)

赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (1)

赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (1)
(1)清子の座りだこ


画像の説明


 着物が良く似合う。
いまどき、足に座りだこのあるおさげ髪の少女。
それが清子という女の子だ。


 正座を繰り返すと、足の同じ場所の皮膚が硬くなり、座りダコができる。
15歳になったばかりの女の子は、まず、深く鼻で呼吸する。
それからおもむろに背筋を伸ばす。
綺麗に畳に座る。その姿勢から行儀と芸妓見習いの修行がはじまる。


 時代は、1970年代の半ば。
この頃はまだ、行儀作法という言葉が世の中に残っていた。


 湯西川温泉の春は遅い。4月の声をきいて、ようやく山陰の雪が溶けはじめる。
雪解けとともに、桜の花が咲く。
この頃から、お端折りと、肩上げの有る結城紬を着た女の子が、
湯西川の街中を走り回るようになった。
おさげを揺らした清子が、赤い鼻緒の下駄をカラコロと鳴らして、
旅館街の路地裏を駆け回っていく。


 「これ。そこのお前。
 ちょいとお待ち。お前が春奴姐さんところへ来た清子かい?。
 せっかくの着物じゃないか。
 2の足をあらわに見せて駆け回るなんて、恥ずかしくないのかい。
 困ったもんだね、近頃の赤襟は。
 着物の裾からチラリと、初々しさが見えるから可愛いんだ。
 それを露骨に脛(すね)まで見せたら、育ち盛りの10歳のガキと同じだ。
 見ていて行儀悪いったら、ありゃしない」


 「あら。そういうあなたは・・・
 どなたかと思えば、伴久ホテルの若女将さん!。
 ウチの『たま』が、朝から出たままなんです。
 お母さんに言われて、たまの行方を探している最中です」


 「たま?。三毛猫の、たまのことかい?。
 下駄をカラコロさせて街中を走り回ったって、無駄だ。
 だいいち。悪戯さかりの子猫は、あんたなんかにゃ絶対に捕まらないさ。
 子猫の行動範囲は、せいぜい広くて50m四方。
 あんた。
 ちゃんと宛(あて)があって、子猫を探し回っているんだろうねぇ。
 闇雲に走り回っても見つかりませんよ、絶対に」


 「そうなんですか・・・
 見つからなかったらウチが困ります。
 うち。午後から、踊りのお稽古が入っているんです。
 でも、踊りが苦手なんです、うち。
 いつまでたっても不器用で、覚えが遅すぎると、おっ師匠さんに怒られてばかりです。
 それなのに遅刻までしてしまったら、おさまりが付きません。
 果てしなく怒られて、こんどこそ、絶対に、愛想つかされてしまいます」


 「なんだい、お前。
 芸妓見習いのくせに、踊りが苦手だというのかい?」


 「いいえ。覚えることが・・・・子供の頃から、人様より、
 少しだけ遅いだけです。すんまへん」


 「生意気を言うんじゃないよ。
 肩上げにお端折りの着物とくれば、それだけで誰が見ても子供じゃないか。
 お師匠さんに怒られたあげく、愛想つかされるのでは気の毒だ。
 ついておいで。心あたりを探してあげよう」


 宇都宮から嫁いで来て、1年。
美人で知られる伴久ホテルの若女将が、『たまが居るのは、こっちだよ』
と清子を手招きする。
旅館街の裏路地を、若女将が先に立って歩いていく。
たまを探す目とは別に、ときどき若女将の目がうしろを着いてくる清子を
興味深そうに振り返る。


 「当てずっぽうに駆け回っても、疲れるだけです。
 たとえ日が暮れても、イタズラ盛りの子猫は、あんたには捕まりません。
 おや、お前。
 まだ肌寒い時期だというのに、足元は素足のまんまかい。
 粋で知られる辰巳芸者の春奴姐さんは、さすがに手加減しませんねぇ。
 へぇぇ。あんた。もう座りタコができているねぇ。
 ひと月足らずで足に座りタコをつくるとは、たいしたもんだ、お前も。
 根性だけはありそうだね。うっふっふ」


(2)へつづく

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