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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま(73)

赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま(73)

赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま(73)
  露営寸前・・・


画像の説明

       
 山頂や稜線上は風が強い。天候が悪化したら雨や雷の直撃を受ける。
そのため、ビバークや緊急の避難場所には適さない。
川の流れのすぐそばも増水の危険が有り、流されることがある。


 草原や湿地もビバークには適さない。
さえぎるもののない草原は、落雷の可能性が有る。
湿地帯では湿ってしまう。


 恭子のリュックには、ビバークに備えて常にツェルトが入っている。
ナイロン製の丈夫な布で、テントの代用として張ることができる。
万一の時、広範囲に応用できる。ゆえに、いつもリュックの中に入れてある。


 ビバークは暗くなる前に決断する必要がある。
まず、よりよいビバーク地を選ぶことがなによりも大切だ。
雨や風がしのげるところ。水はけがよく、木を利用してツエルトを晴れる所が最適。
時刻は昼を過ぎたばかりだが、もはやあまり猶予はない。


 (この悪天候は、ガスがおさまってもそれで終わりにはならない。
 最悪の事態を考え、早めに、ビバーク地を考える必要があるな・・・)


 必死に歩くたまの背中を追いながら、恭子がポツリとつぶやく。
事態はそれほど切迫している。
しかし。このあたりにビバークに適したポイントは無い。
2人を取り巻く一帯は、谷に向かって滑り落ちる危険のある草の斜面。
ところどころにハイマツの群生があるだけだ。


 (最悪の時はハイマツの根を利用して、ツェルトを張ろう)


 濃密に立ち込めたガスの上に、雷雲がやって来た。
時間とともに暗さが増していく。気温も下がって来た。


(雷雲の接近だけじゃない。間違いなく、続いて荒れた気象がやって来る)


 恭子はすでに最悪の事態を想定している。ビバークの覚悟を決めている。
ビバークするなら、早めに準備した方がいい。
問題はそのことをいつ、たまの行動を見守っている清子に伝えるかだ。
まったく視界を奪われたなか。
確信もなくやむくもに動き回っては、無駄に体力を消耗するだけだ。


 たまがまた、立ち止まった。
風が方向を変えるたび、匂いの源を失ってたまが立ち止まる。
そろそろ限界なのだろうか。清子を見上げたたまの目に元気がない。
『もういい、たま。そんなに無理しなくても』清子がたまを抱き上げる。


 (たまも限界のようですね。となるとこれ以上、歩き回るのは得策じゃない。
 覚悟を決め、ハイマツの茂みでツェルトを張るか)


 清子に露営すると伝えようとしたとき、はるか先で何かが動く気配がした。
その瞬間。ぐったりと目を閉じていたたまが、いきなり元気を取り戻す。
『おいらの大好物のカツオ節の匂いだ!。今度こそ、間違いねぇぞ・・・
ありがたいことにカツオ節がむこうから、おいらに逢いにやって来た!』


 元気を取り戻したたまが、清子の腕から飛び降りる。
そのまま勢いよく、濃霧の中を駆け出していく。
清子にも恭子にも、いったい何が起こったのかわからない。
止める間もなくたまの小さな体が、ガスの向こうへあっという間に消えていく。


 いっぽう。
ひげの管理人が濃密な霧の向こうに、何やら動く動物の気配を感じとる。
その物体が、こちらにむかって全速力で駆けてくる。
『なんだぁ、いったいぜんたい何事だ?』ひげの支配人が、自分の足もとへ目を凝らす。
うごめく気配はまちがいなく、ひげの支配人めがけて、まっしぐらに駆けてくる。


 『なんだ・・・この妙な気配は。
 ヒメサユリの群生地に、顔見知りの動物なんかいないぞ・・・』


 その瞬間。あしもとに、三毛猫のたまがあらわれた。
怒涛のようにあらわれたたまが、後ろ脚をぐっと地面に踏ん張る。
つぎの瞬間。管理人の右手の袖に向かってジャンプする。


 ひげの管理人の袖にぶら下がったたまが、満足そうに目を細める。
『おいらの大好物のカツオ節だ。それにしても、匂いは有るが味がねぇぞ。
どうなってんだ。これじゃまるで詐欺じゃねぇか・・・』
管理人の袖にぶらさがったたまが、チエッと不満そうに口を歪める。


 「こいつは驚いた。
 おまえさんはゆうべの、三毛猫のオスじゃないか。
 おまえさんが此処に居るということは、お姉ちゃんたちも近くにいるはずだな。
 お~い、諸君。集まってくれ。吉報だ。
 有力な手掛かりが、向こうから俺のところへやって来た。
 いてて|。こら子猫。
 嬉しいからとはいえ、俺の手を本気でガリガリ噛むんじゃねぇ!」


(74)へつづく

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