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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま(74)

赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま(74)

赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま(74) 
 騎士(ナイト)


画像の説明


 「2人とも、無事に生還したぞ!。もちろん無傷だ」


 作業員の2人に背負われて、清子と恭子が姿を見せる。
待機していた登山客たちの間から、ドッと大きな歓声があがる。


 『無事か、よかった、よかった。寒かっただろう。まずは風呂だ。
身体を温めるのが先だ!。風呂が湧いているから入ってもらおう』
無事を確認した山小舎で、歓迎の大騒ぎが始まる。


 稜線上の山小屋の水は貴重品。
谷川沿いに建ち、水が豊富なはずの山小屋でも、燃料の輸送が困難なため
たいていの場合、登山客用の風呂は設置されていない。
ただし、従業員用の風呂は有る。
山荘に長期間つめている従業員のため、富士山のように水が不足している
地域を除き、ほとんどの山小舎に従業員用の風呂が有る。


 ただし。毎日入れるわけではない。
貴重な水と燃料を守るため、従業員の入浴も数日おきと決められている。


 「君たちは、特別待遇だ」。ヒゲの管理人が目を細める。
お湯を沸かしてくれと指示された避難客たちが、水場からバケツリレーで
大量の水に運びあげた。
風呂を沸かしながら、ひたすら2人の無事の帰還を待ち受けていた。


 「遠慮することはない。2人して充分にあったまってくるといい」


 全員に見送られ清子と恭子が、従業員用の風呂へ消えていく。
ノコノコと2人の後を付いていくたまを、ヒゲの管理人が『ちょっと待て』
と怖い顔で呼び止める。


 「こらこら。お前さんは遠慮しろ、ウチの風呂は男子禁制だ。
 あきらめて俺たちの宴に混ざれ」


 宴に混ざれといわれても、たまは酒を飲まない。
『安心しろ。猫に酒を飲ませて”猫じゃ”を躍らせるつもりなど毛頭ない。
なにしろおまえは、2人の麗しい姫を助けたナイト(騎士)だからな。
酒よりも、いいものがある。お前の大好きな”猫飯(ねこまんま)”だ」


 たまの目の前に、たっぷりカツオ節が乗った冷めた白米が出てきた。
関東風のねこまんまは、ご飯の上にカツオ節を乗せる。
関西ではご飯に味噌汁をかけたものを、猫まんまとよぶ。


 「騎士(ナイト)たるもの。おなごの尻を追い回して何とする。
 デンと構え、風呂から出てくるのを待つのが、騎士のたしなみというものだ。
 そいつをたらふく食っているうち、2人が風呂から出てくるだろう」

 
 『なんだぁ・・・騎士のたしなみというのは?』


 猫まんまを途中でやめたたまが、、管理人を振りかえる。
『騎士というのは、騎乗する戦士のことだ』管理人が、たまの顔を見下ろす。
『馬に乗る?、おいらが?。ますますもって、意味がわからん?』
管理人の膝へ、たまが座り込む。


 「中世のヨーロッパで、馬に乗って戦う戦士に与えられた名誉称号が騎士だ。
 そこから生まれた騎士という特別な階級が、やがて定着する。
 フランス語でシュヴァリエと言い、イタリア語ではカヴァリエーレと言う。
 スペイン語ではカバジェロ。いずれも「騎乗」という意味がある。
 英語ではナイトと呼ぶ。これには「従僕」という意味もある」


 『従僕?。いきなり召し使いに転落かよ。
 身の回りの世話する下僕じゃ、おいら、つまんないな』


 「こらこら。悲観するのまだ早い。肝心の話はこれからだ。
 お前。レディーファーストという西洋の文化を知っているか?」


 『車を降りるときや、椅子へ座るとき、女性をエスコートするあれのことだろう?
 そいつがなんで、ナイトと関係があるんだ』


 「大有りだ。
 レディーファーストの文化は、中世の騎士たちが作り出した。
 女性の機嫌を取る男性の作法がはじまったのは、ローマ帝国の時代。
 恋愛術や、口説きの手法がたいへん流行した。
 だがこれらはいまのレディーファーストと、まったく関係がない。
 本当のレディーファーストは、騎士階級の「騎士道』からはじまった」


 『騎士道?。なんだよそれ。
 そいつは日本の武士道と、同じようなものなのか?』


(75)へつづく

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