http://saradakann.xsrv.jp/y_key_1456d36d458ffacd.html

現代小説 更新中

オヤジ達の白球(2) 持病

オヤジ達の白球(2) 持病

オヤジ達の白球(2) 持病


画像の説明


 祐介は、持病をもっている。
「ぎっくり腰」からはじまる腰の痛みだ。
30代のはじめの頃。「椎間板ヘルニア」と診断され、ひと月ほど入院したことがある。
以来。やっかいな痛みが、祐介の身体に定着した。
腰の痛みはいつも些細なきっかけからはじまる。


 数日前のこと。棚の荷物を取ろうとしたとき。わずかな痛みが背筋をはしった。
「あれ?。またやったかな?」と思った。
こんな風に祐介の腰痛は、ささいなきっかけからはじまる。
案の定。痛みは、時間とともに激しさを増した。


 痛みはじめてから3日目の朝。寝床から起き上がることができなくなった。
横になったまま、身動きひとつできない痛みになる。


 「また、いつもの状態がはじまりやがった。
 分かっているがこうなると、独り者は、どうにもならん」


 布団に横になったまま、ひたすら痛みに耐えるしか対策がない。
寝込んだままの2日目の朝。
玄関へ、人がやって来たような気配がする。


 祐介は一人っ子。
早くに両親を亡くしている。そのため、親戚との付き合いは薄い。
どちらかといえば疎遠のままだ。
「誰だ。今頃・・・」身体の向きを変えるだけで、痛みが襲ってくる。
玄関の様子を確認することなど、とうていできない。


 ピンポン~。玄関のチャイムが鳴る。


 「開いてるぞ。勝手に入ってきてくれ」


 そう叫んだ。だが声が出ない。かすれきっている。
まる2日間、何も食べていないためだ。体力はすでに底をついている。
(落ち目の三度笠だな、情けねぇ。声もろくに出やしねぇ・・・)
もういちど。ピンポン~と玄関のチャイムが鳴る。
祐介は、声を出すことを諦めた。


 それから数分後。今度は庭へ、誰かが入って来たような物音がする。
(へっ・・・回り込んで来たぜ。物好きな奴もいるもんだ・・・)
庭は荒れ放題になっている。
好きではじめた家庭菜園も、手入れを中断したまま、ぼさぼさ状態になっている。
庭というより、まるで耕作放棄の農地のようだ。
不安を感じながら、こわごわ荒れ地を歩いてくる様子が、枕元まで伝わって来る。


 『誰だいったい。庭まで入って来るとは、ずいぶん物好きな奴だ』


 ようやくたどり着いた足音が、ガラスの向こうで躊躇っている。
覚悟を決めたのか。そっと伸びた指先が、コンコンと軽くガラスを叩きはじめた。
ガラス戸に手をかけた瞬間。動く気配を感じ取る。
「あら。鍵はかかっていないみたいです。不用心ですねぇ、祐介ったら・・・」
聞き覚えのある声だ。


 からりと音を立て、ガラス戸があく。
『勝手に入るわよ。いるんでしょ。祐介?』
女の気配が廊下へ入って来る。
外気と一緒に、いつもの化粧の匂いが漂ってきた。


 麦わら帽子をかぶった女が、祐介の枕元へ立つ。
起き上がろうとする祐介を、『そのままでいいよ』と制止する。


 「無理して起きなくてもいいよ。
 もう3日も、お店を休んでいるんでしょ。
 どうしたの?。またいつもの、腰痛のはじまり?。
 軟弱だわねぇ。あんたの腰は」


 あらわれたのは、幼なじみの陽子。
成人式が終わった直後。望まれて資産家のもとへ嫁いだ。
「金に目がくらんだんだぜ、あいつは』と、さんざん同級生たちが避難した。
だが何が気にいらなかったのか、わずか3ヶ月で離婚した。
その後。ぷっつりと消息が途絶えた。
まったく連絡がつかず、30年近い月日が経過した。
その陽子が、ひょっこり実家へ舞い戻って来た。いまから半年前のことだ。


 「動けないんだろう。朝ごはんを作って来た。
 病人のくせに無駄な元気を出して、わたしを襲ったりしないでおくれ」


 「朝飯か。そいつはありがてぇ。
 見た通り寝たっきりだ。2日も食っていないから、腹はペコペコだ。
 動けないが、お前がここまで来てサービスしてくれるのなら、話は別だ」


(3)へつづく

コメント


認証コード7842

コメントは管理者の承認後に表示されます。

powered by Quick Homepage Maker 5.3
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional