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現代小説 更新中

オヤジ達の白球(12)瓢箪から駒

オヤジ達の白球(12)瓢箪から駒

オヤジ達の白球(12)瓢箪から駒


画像の説明

 
 「あのやろう。
 謎の女の気をひくため、こんどはソフトボールのピッチャーになるってか。
 動機が不純すぎるなぁ。
 そんなことでホントに投手になれると思っているのか、あいつは?」


 北海の熊が呆れる。グビリと苦そうに酒を呑み込む。
「そういうな」岡崎が熱燗徳利を持ち上げる。


 「実のところ、俺だって半信半疑だ。
 あいつの場合。長く続いた趣味がひとつもねぇ。
 確かに熱しやすくて冷めやすい男だ。
 だがよ。今回にかぎりあそこまで、ぜったいにやりとげると強調するのも珍しい。
 ひょっとすると、瓢箪から駒が出るかもしれねぇ」


 「笑わせるな、絶対に出るもんか。
 駒どころか、あいつの頭からはホントの話のひとつも出てこねぇ。
 またいつもの出まかせに決まってる。
 同級生だからってあいつの肩を持ち過ぎだ。おまえさんも」


 「待て待て。話にはまだ続きがある。
 大将に、居酒屋のソフトボールのチームを作ってほしいそうだ。
 投手になっても、投げる場がなきゃ意味がねぇ。
 大将。そういうわけだ。
 飲んべェどもを集めて、ソフトボールのチームを作ってくれないか」


 「おいおい。つまみをオーダーするわけじゃねぇ。
 ソフトボールのチームといえば、最低でも10人は集める必要がある。
 そんなに集まるかよ、こんな貧乏居酒屋で」


 北海の熊が「無理無理」と大きな音を立てて熱燗を呑む。
「悪かったな、貧乏居酒屋で」カウンターの中で、祐介が憮然とする。
しかし。ソフトボールのチームを作るというのは、なんだか面白そうな話だ。


 (たしかに酒ばっかり呑んでいたんじゃ、身体によくねぇ。
 ソフトボールで身体を動かせばいい運動になる。悪くねぇかもしれねぇ発案だな)


 しかし。常連客の中に、野球経験者はほとんど居ない。
ソフトボールの経験者となれば、なおさらだ。
ほとんどがお遊びのようなソフトボールなら、参加したことがある。
チームを作るには、なんともお粗末な実情がある。


 「そういえば熊。おまえさんのチームはどうなった?。
 出場停止で、事実上の空中分解と聞いたが?」


 「だからよ。俺のせいじゃねぇ。
 出場停止を決めた町の連中が悪いんだ。おかげでウチのチームは冬眠中だ」


 「いつ目覚めるんだ。その冬眠から?」


 「そいつは町が決めることだ。俺たちに眠りから覚める権限はねぇ」


 「町のソフト部会はおまえさんたちのチームを、永久追放と決めたそうだ」


 「なんだと。誰がいつ、そんな無茶なことを決めたんだ!」


 「先日のことだ。町の体協の連中が飲みに来た。
 そのとき。熊のチームは永久追放処分にするという話が出た。
 素人の審判を脅迫するようでは、親睦ソフトボールの趣旨におおいに反する。
 そのほかにもおまえさんところは、いろいろと問題のあったチームらしいからな。
 審判の買収事件が、最後の決め手になったらしい。
 当然だ。誰が考えてもそう決断をくだすだろう。
 というわけでお前さんは、ソフトボールで活躍する場を永久に失ったことになる」


 「えっ・・・俺の唯一の楽しみを奪い取るのか、体協の奴らは!」


 「仕方ねぇだろう、北海の熊。身から出た錆だ。
 おまえさんところのチームは優秀な選手が揃っているが、総じてがらが悪い。
 おととしだって審判の判定に、さんざんクレームをつけた。
 問題児ばかりが集まっているチームだ。
 去年の審判恐喝で、ついに体協のおえらがたの堪忍袋の緒が切れた。
 どうする熊。このままじゃホントにお前さんは、ソフトボールから、
 永久に追放されたままになるぜ」


(13)へつづく

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