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オヤジ達の白球(14)民事再生法

オヤジ達の白球(14)民事再生法

オヤジ達の白球(14)民事再生法


画像の説明


 熊の勤めていた土木会社も、バブル崩壊の影響をまともに受けた。
完工高は40億ちかくにふくれあがっていた。
しかし。約束していた銀行からの融資が受けられず、5億の手形が落ちなくなる
瀬戸際に追い込まれた。
追い打ちをかけるように工事中だった大きな現場が、つぎつぎ完成していく。
下請け業者への支払いの期日が切迫してくる。
こうなると資金繰りが、ますます厳しい状況になっていく。


 さいわいなことに、元請の大手建設会社から融資を受けることが決まっていた。
だが頼みの綱の元請本体が、銀行から大規模な債務保証を受ける状態に陥ってしまった。
結局。融資は実現しなった。
ここまで追い込まれてしまうと、あとは銀行管理になるか倒産するかの
選択しか残されていない。


 3代目の社長は、事業を継続してこそ意味が有ると考えた。
三日三晩の寝ずの検討を重ねた結果、民事再生の道があることを知る。
民事再生法を申請し、事業をつづけながら弁済していくという、いばらの道を選択する。


 民事再生法は、日本における倒産法のひとつ。
中小企業の再建を目的として、2000年から施工された法律だ。
「破産手続開始の原因の生ずるおそれ」または「事業の継続に著しい支障を来すことなく
債務を弁済できないこと」が裁判所に認められれば、債務を大幅に減らすことができる。
また経営方針や業務内容を見直すことで、事業を継続しながら会社再建を
目指すこともできる。


 倒産と会社更生法と、民事再生法には大きな違いが有る。
「倒産」は、事業継続が困難になった会社が破産・清算をおこなうことを言う。
倒産することで、すべてを荼毘(だび)に付してしまう。
その時の傷は大きいが、時がたてば当時の代表者はまた新しい会社を設立することも
出来るし、クレジットカードを持つこともできる。


 会社更生法は、主に中小企業の再建を念頭に置いたものだ。
裁判所が選任した管財人の下で事業の再建を目指す。
当然トップ経営陣は一新される。それまで在籍していた代表者はそこでお役御免になる。
しかし。民事再生法を受けた会社は、事業も代表者もそのまま継続することができる
債務額は大幅に削減されるが、弁済しながら事業を続けていくことになる。


 民事再生受理1週間後。説明会を開いたところ、200名以上の債権者が集まった。
血気盛んな業者も多く、紛糾して収集がつかず。翌週もう一回行うことになった。
罵倒、怒号の限りを浴びながらも、理解してもらうまで話し合いを重ねる日々がつづいた。
すべての清算が済めば解放される倒産と違い、民事再生法は事業も代表者も継続する。
このときの思いを「全身に包帯をぐるぐる巻にした重症患者が、なんとか自力で
会社を建て直している感じだった」と3代目の社長は振り返っている。

 
 民事再生法下の会社は、銀行からの融資を受けられない。
今までの取引先も離れていく。
申請前は40億あった完工高が、僅か1億まで落ちこんでいく。
四面楚歌の中。厳しい資金繰りをこなしながら、会社は第一回目の弁済をおこなう。
以後。10回にわたり弁済を行っていく。


 ピークの時には70人いた社員が、わずか4人になった。
その4人の中に、北海の熊が居た。
長く居た社員たちが次々と去っていく中。熊は迷わず社長と運命を共にした。
別に深い考えが有ったわけでは無い。
自分にソフトボールの投手という新しい出会いを作ってくれた会社と社長に
深く感謝をしていたからだ。
ただそれだけで、会社と運命をともにすると最初から決めていた。


 民事再生から5年。会社が弁済を完了する。
1億前後と低迷していた受注が、わずかずつだが上昇していく。
そうなるとかつての社員たちが、ひとりふたりと会社へ戻って来る。


 熊は会社の先行きを考えるほど、斬れる頭を持っているわけでは無い。
もとどおりの重機のオペレーターに戻る。
冬になると東北地方や北海道から出稼ぎにやってくる季節労務者たちをまとめながら
あちこちの現場を転々とする生活が、熊に戻って来た。


 そんな暮らしが落ち着いてきたころ。
かつてのライバルから、ひさしぶりの電話がかかってきた。


 『熊か。ひさしぶりだな。
 実はよ。土木リーグの残党たちであたらしいチームを作った。
 だが、優秀な投手が居ない。
 どうだ。おれたちのチームへきてもういちど、いっしょにソフトをやらないか』


(15)へつづく

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