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現代小説 更新中

オヤジ達の白球(22)深夜のネズミ

オヤジ達の白球(22)深夜のネズミ

オヤジ達の白球(22)深夜のネズミ


画像の説明


 女の肩を抱き寄せた柊が、闇の中へ消えていく。


 「ふん。なんでぇ。見せつけやがってあの野郎。どういうつもりだ一体全体。
めずらしく顔を見せたと思ったら、密会の場を堂々と俺に見せつけるなんて・・・
どういう神経をしているんだ、あいつは。
不倫のせいで家庭が崩壊したって知るもんか。好きにしやがれ!」


 毒づいている祐介に耳へ、ガタンと路地から物音が響いてきた。


 (なんだ、いまのは?。変な物音がしたな。
 いまの時間になると、まったく人が通らないはずの横の路地からだ。
 ネズミにしては、大きすぎる音だ・・・・)


 怪しい気配を感じ取った祐介が、思わず手元の包丁を握りしめる。
さらにもういちど、ガタンと大きな音がした。
誰かが何かにつまづいたようだ。
横の路地も、店の裏側も、足元などまったく見えない真っ暗闇だ。
それでも誰かが確実にうごめいている。


 物音が、店の裏口へ向かってそろそろと移動していく。
(泥棒か?。最近、怪しい輩(やから)が徘徊してるというからな。油断できねぇぞ)
祐介が手にした包丁を、ぐっと握り直す。


 裏口を探しているのだろうか。手探りの気配がつづく。
のろのろと移動していく物音が、とぎれとぎれにここまで聞こえてくる。
やがて、まったく使われていない勝手口のガラス戸が、2度3度、遠慮がちにノックされる。


 「あたしだよ、祐介。
 慌てて路地に駆け込んだものだから、足をくじいたようだ。
 開けておくれ。あたしだよ。陽子だよ」

  
 「陽子?。ホントに陽子か・・・いったい何してんだお前。
 こんな時間に、そんな真っ暗な場所で、いったいぜんたい何をやってんだぁ?」


 「何もしてないさ。いつも通りの散歩だよ」


 「散歩?。正気かお前。
 真っ暗闇の露地と、足元の悪い裏道を歩くのが、お前さんの散歩なのか?」


 「バカ言わないの。そんなはずないだろう。
 たったいま、お前さんの店から、肩を組んだ男と女が出てきただろう。
 男の顔は知らないけど、女は、近所に住んでいる顔見知りの主婦だ」


 「何。柊の連れの女を知っているのか、お前は!」


 「びっくりしたよ。
 慌てて身を隠そうとしたけど、逃げる場所なんかどこにもないじゃないの。
 有るのは、あんたのところの路地だけだ。
 なんであんな狭い場所に、あんなにたくさん、ガラクタばかり置いておくんだよ。
 運動神経が良いから、辛うじて踏みとどまった。
 だけどさ、運が悪けりゃいまごろは、もっとおおきくこけて救急病院行きだ。
 とにかく、ここを開けておくれ。
 喉がカラカラだ。足も痛いし。とにかく冷たい水を一杯飲みたいな・・・」


 「しょうがねぇなぁ」祐介が裏口の鍵を開ける。
真っ赤なジョギングシューズを履いた陽子が、片足をかばうような態勢で、
もうだめだとばかり、座り込んでいる。


(座り込んでいるのか。大丈夫か?、お前・・・・)


 心配して覗き込む祐介に、
「鈍感。痛みに耐えてうずくまっている女に、大丈夫かはないだろう。ふん!。
デリカシーに欠けているんだから、まったくもう・・・・」
陽子の怒りに燃えた目が、下から見上げる。


 「悪かったな。手を貸してやる。どうだ、これなら立ち上げれるか?」


 「イタタ。無理無理。どうやら本格的に足をくじいたらしい」


 「運動神経の良い奴が、足をくじいたのか?。
 そいつはさらに気の毒だ。
 横の路地に、ガラクタを積み上げた俺のせいだな。
 ほら、抱き上げてやるから両手を広げて、俺の肩へぶらさがれ」


 「いいねぇ、ひさしぶりのお姫様抱っこだ。
 なんならこのままベッドへ直行してもいいよ、あんたとなら」


 「馬鹿言ってんじゃねぇ。そんなことより、痛めた足の治療が先だろう。
 出してみろ。俺がみてやる」


 陽子がジョギングシューズと、靴下を脱ぐ。
何かに強くぶつけたらしい。まくり上げた裾から赤い擦り傷が出てきた。
「ここはどうだ?」くるぶしのあたりを、祐介がそっと押す。
その瞬間。陽子がけたたましい悲鳴を上げる。


 「馬鹿やろう。
 なんて声をあげるんだ。隣近所が驚いて、目を覚ますだろう!」


 「目の前は一面の田圃だ。
 裏は河原だ。どこに驚く人が住んでいるのさ。
 半径50m以内に住んでいるものといえば、田圃のカエルと、渡良瀬川の鮎くらいだ。
 あ・・・あと、足をくじいた美人のネズミさんがここに居るか・・・」

 
(23)へつづく

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