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現代小説 更新中

オヤジ達の白球(28)準備運動

オヤジ達の白球(28)準備運動

オヤジ達の白球(28)準備運動


画像の説明


 「なんでぇ。誰が現れるのかと思えば、三日坊主の坂上じゃねぇか」


 面白くネェな。なんでぇ、見る価値なんかゼロだと熊が舌を打つ。


 「まぁそう言うな。これからが見どころだ。
 やっこさんがあそこでいったい何をはじめるか、その眼でしっかり確かめてくれ」


 ただとは言わねぇぜ、ほらと目の前に2本目の山崎12年ものを差し出す。
今度はミニボトルではない。180ミリリットルが入っているハーフサイズだ。


 「なんでぇ。ドラえもんのポケットみたいだな。
 ボトルがだんだん大きくなるじゃねぇか。
 ということは次は、山崎のフルボトルということになるのかな?」


 「すべては、おめえの対応次第だ。
 付き合ってくれるなら、フルボトルを出してやってもいいぞ」


 「俺の対応次第だって?。
 なんでぇ。坂上のピッチング練習の見学とは別に、まるで何か俺に
 別の頼み事でもあるみたいだな?」


 「勘がいいな。相変わらず。
 たしかにお前さんに、別件の頼みごとが有る。だがその件は後回しだ。
 まずは坂本の投球の様子を、つぶさに見てくれ」


 「こんな場所でこそこそウインドミルの特訓をするなんて、了見の狭い奴だな、坂上も。
 ど素人がいきなり見よう見まねで投げたって、絶対に上手くなんかならねぇ。
 まずは自分の師匠になってくれる人を探して、徹底的に教わることだ。
 スタートからして考え方が間違っているな、坂上のやつ」

 
 「なるほど。お前さんもそう思うか。やっぱりな・・・
 あいつ。全日本女子ソフトボールチームの監督だった宇津木妙子が書いた
 ソフトボール入門という本を買って来たそうだ。
 その中にあるピッチングの心得という部分を読み、ピンとひらめいたと、
 坂上は言っている」


 「本を読んだだけでウインドミルが投げられると思っているか、あの野郎。
 どこまで発想が未熟なんだ、あの野郎は・・・」


 熊が口を、への字に曲げる。
坂上はウインドミル投法を、甘く見過ぎている。
腰へ手を当てて手首を返す独特のタイミングを覚えるだけでも、1年以上かかる。
投手を目指すものは、この独特のタイミングを身体で習得するため、歩行中も欠かさず、
腰に手を当てるこの動作を繰り返す。


 土手の上から熊と岡崎が見つめていることに気づかず、坂上が投球練習に入る。
しかし。準備運動をするわけではない。
いきなり腕をぐるりと回したあと、ポンポンとグローブの中で白いボルを躍らせている。


 「あの野郎。準備運動もしないでいきなりピッチングをはじめるつもりかよ!。
 ますますもって呆れ果てた野郎だ・・・」


 「いきなり投げ始めると駄目か、やっぱり」


 「全てのスポーツにおいて、ウォーミングアップと言って運動の前に準備運動をする。
 ウォーミングは、温めるという意味がある。運動する前に、体を温める必要がある。
 運動していないとき筋肉内を流れている血液の量は、およそ15%。
 血液はおもに、内臓や脳を流れているからだ。
 身体を温めていくことで、筋肉へ流れていく血液の量が増えていく。
 スポーツをはじめる前にかならずやること、それが身体を動かすための準備運動だ」」


 「詳しいなぁ、お前」


 「当たり前だ。
 チームで投げていたころ、ちゃんと協会の指導者講習を受けたからな」

 
 「指導者講習・・・そんなものがあるのか?、ソフトボールには」

 
 「これだから素人は困る。
 ソフトボールだけじゃねぇ。すべてのスポーツに指導者講習は有る。
 無知な人間は準備運動もろくにしないで、いきなり動き始める。
 肩も温めずにボールを投げる。
 そんな練習を繰り返していたら、そのうちどこかを故障することになる」


 「我流や自己流のスポーツは、あまりにも危険すぎるということか?」

 
 「そういうことさ。
 なかなかに理解が早いな、おまえは。単細胞の坂上と違って」


(29)へつづく

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